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はっきりといおう。わたしはゴンが大好きだ。この感情はもう恋情だとか愛情だとか、そんな風に形容してしまっても構わないと思う。その感情を自覚してから、単純なわたしは衝動を押さえ込むことが出来ず、赤裸々にゴンに愛の告白を繰り返すようになった。そして
ことあるごとに彼に構うようになった。
――最初こそ恥じらいもあったのだが、最近では最早挨拶感覚になってしまっている。しかしそこは誤解してもらいたくない、わたしはいつでも100%本気なのだった。
その100%本気の告白に、ゴンはいつも笑顔で「オレもだよ!」と答えてくれたが、いやしかし、多分わたしの好きと君の好きは違うぞ? 切ないけれど。それでもそんな
報われないと思われる答えにすら心が温められる自分はもう、救えないなあと、つくづく思う。
君だから好き
さて。それはいつも通り、天空闘技場のゴンの部屋で「ゴン大好きだよー」なんて言いながら彼を構っていた、ある日のことだ。ゴンは「そういえば前から気になってたんだけど」と突然に口火を切った。
「はマニアなの?」
あまりにも無垢な表情で、あまりにも真っ直ぐに尋ねられたものだから、その口から出てきたそぐわない言葉に反応が遅れてしまった。私はぱちぱちと瞬きをして、「は?」と、やっとのことで反応を示す。
「だから、はマニアなのかって」
「マ、マニア? マニアって?」
「えーっとね、つまり……自分より小さくないと駄目なの? っていうか……年下じゃないと駄目なの? ってことだよ」
彼の言葉を耳に入れて、
わたしは口元を引き攣らせた。理解するまでに少し時間がかかってしまったが、要するに、こういうことだ。彼はわたしがショタコンなのかどうなのかと問いかけている。
あのゴンの口からマニアという言葉が出たということよりもショックなのは、ゴンがわたしのことをそんな風に思っていたという事実。わたしは思い切り狼狽して咽る、そしてそのあと息も絶え絶えになりながら低い位置にあるゴンの肩に手を置いて、
ゆるゆると首を振った。
「わたしはショタコンじゃないよ。むしろ年上の、大人っぽい方がタイプだって!」
「じゃあどうしてオレのことが好きなの?」
そう言われて、またも言葉に詰まった。どうして? こちらが聞きたい。そうだ、わたしはクールでダンディな大人の男が好きだったはずなのに、なんでこんな年下の、声変わりもしていないような子を好きになってしまったのだろう。
好みのタイプと実際好きになる人は意外と重ならないものだとよくいうが、実際に自分がそういう立場になってしまうと殊更に不思議だった。
「どうしてだろう……ちょっと考えさせて」
ゴンの肩から手を離し、掌を向けて「たんま」の素振りをした。そして思考の海に沈む。わたしが彼を好きな理由。わたしが好きな彼の要素は?
普段の一生懸命で真っ直ぐで、単純思考な可愛いゴンも、勿論好きだった。というか大好きだ。それでも自分は彼のそんな面だけではなく、たまに垣間見える将来性、とでもいえるような一面にも多く惹かれた所があると思う。
そう、それは例えば ふとした瞬間に灯る、見る者をハッとさせるような瞳の光だとか。いつになく真剣な横顔とか。スリルを楽しむ笑みだとか。
「? 大丈夫?」
「あ、ごめん。ちょっと悦に入ってた。……ごめん!」
がくっと片側の肩を下げるゴンに笑いながら謝る。しかしその後、態度を改めて、わたしはゴンに向き直った。
「ゴンだからだと思う」
「オレだから?」
「そう。歳とか身長とか関係なく。ゴンだから好きなんだと思う」
こんな風に真面目な答えを口で述べるのは正直恥ずかしいものがあったが、ゴンの問いにまともに答えないなんてことは絶対に出来ず、ありのままの本心を伝えた。口下手なわたしには、これくらいしか言えないけれど――そうであることに違いはない。
わたしの言葉を吟味するように、俯いて考えを巡らせていたゴンは、不意に顔をあげた。その瞬間わたしの心臓は一際大きく脈打った。
「……へへ」
顔を少し赤らめて、嬉しそうに笑うゴンがあまりにも可愛くて。またしても言葉を失うわたしにゴンは歩み寄り、何を思ったのか急に抱きついてくる。
「(う、まずい……!)」
腰の辺りに巻かれているゴンの腕や直ぐ近くにある温かさに息が止まりそうになった。わたしの両手はゴンを抱き返すこともできず、宙をかくばかりだ。
「ゴ、ゴゴゴゴン?」
「どもりすぎだよ」
ゴンは少し笑って、
「たまにはオレから甘えてもいいでしょ?」
「!」
その一言に頭が沸騰しそうになる。あわあわと顔を赤くして、助けを求めるように周りを見てみるが、この部屋には彼とわたし以外の存在はないのだ。その動作は無駄に終わった。しばらくそんな動き辛い状態が続いていたが、ゴンは急にぱっと体を離した。
名残惜しい、かなり名残惜しいけれど、少し安心する。が、安堵の溜息をついたところで、ゴンはわたしと目を合わせて、近くにおいてある椅子を指差した。
「座って」
「え、なんで?」
「いいから!」
にこっと笑って椅子を差し続けるゴン。その笑顔を見ていたら理由なんてどうでもよくなって、わたしは快くそこに腰を下ろした。
すると、だ。ぱっと視界が暗くなる。
「……?」
座る姿勢になったわたしよりも、ゴンの背の方が少し高くなる。それを利用して、ゴンが上から、わたしの頭を抱えるようにして抱きしめているのだということに気付いたのは、数十秒後の話だった。
「ゴ、ゴン?」
「……早くよりも大きくなりたいな」
「え?」
「より大きかったらこんなふうに抱きしめることが出来るのに」
ま、待って、言っていることが良く分からない。
静かに話しているはずのゴンの声は、どうしたことか部屋の隅々まで響いていくように聞こえた。
「に抱きしめられるのも好きだけど、オレだって男だもん。正直言って、こっちの方がいいよ。やっぱり」
視界はゴンの服に塞がれていて、彼の表情を見ることは出来ない。それを抜きにしても、今ゴンがどんな顔をしているのか全く想像出来なかった。
「でもよかった、がああ言ってくれて。これで心置きなく大きくなれる」
ゴンはくすくすと笑う。
END
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